2014年10月12日日曜日

昼下がりのラタトゥイユは、マンドラゴラの白昼夢を見せるか

 夏野菜。といったら、トマト、茄子にズッキーニ。色とりどり、輝くばかりのアントシアニン!

 
 さて、茄子の原産地はインド、つまり天竺。中国を経て日本へやってきたのが1000年以上も前のことだというから、飛鳥時代にはまだ茄子は日本にはなく、聖徳太子も茄子などという植物が世の中に存在することを知らなかったに違いない。
 茄子は平安時代の終わり頃にやってきた外来植物である。茄子のぬか漬けも焼き茄子も、飛鳥時代にはまだなく、茄子紺という色も、平安時代末期以降に生まれた色名ということになる。

 で、夏に実がなるので「夏実」(なつみ)と呼んでいたのが、いつの間にか「なすび」になったという。夏実というがごとく、茄子は夏によく実る。「秋ナスは嫁に食わすな」という諺は、茄子が体を冷やすことから生まれたという説があるが、なるほど、夏の盛りに実を結ぶ植物には、たいてい体を冷やす働きがあるのだそうだ。
 
 ところで、トマトの原産地はアンデスで、昔はトマト属( Lycopersicon)として独立して分類されていたのだが、今では茄子の仲間。トマトは日本名では、唐柿(とうし)、赤茄子(あかなす)、小金瓜(こがねうり)などと呼ばれ、柿だか茄子だか瓜だか、よくわからないのだが、種類的には茄子の親戚という感じになるらしい。
 
 そして、茄子といえばマンドラゴラ! そう、ナス科マンドラゴラ。これは古くから中国西部から地中海にかけて分布していた植物で、なにせ、旧約聖書にも登場するぐらい。マンドラゴラには、恋なすび、とかいう異名があるらしいのだが、それは、春咲き種(M. officinarum)と秋咲き種(M. autumnalis)があり、伝説では春咲きが雄、秋咲きが雌とみなされたことからきているのではないか、とされる。まあ、根っこは足やら手やらが生えてひからびた生き物のように見えなくもない。


 茄子の仲間といっても、茄子からはかなり遠縁の関係性であるのだが、花はたしかに茄子の花のようでもあり、丸っこい実は、なるほどエッグプラント、卵のようにも見える。

 マンドラゴラの実は、毒性があり、麻酔薬とか、下剤として使用していたようであるが、食用などにはもちろんしない。植物性アルカロイド毒、含有。オカルトショップに行けば、乾燥させた根っこを売ってるが、マンドラゴラの場合、毒性が強いのはその根。取扱注意であり、もちろん食品としての販売はしていないし、自家用で薬として煎じるのもNGである。

 マンドラゴラは、魔術や錬金術の話には必ずと言っていいほど登場する植物。引き抜くと悲鳴を上げて、まともに聞いた人間は発狂して死んでしまうという伝説があるのだが、それはまったくの嘘で、耳栓をして黒い犬にひっこぬかせるというまことしやかに書かれている方法も、そんな必要はまったくなし。
 かつて、カルタゴの軍勢が撤退する時にマンドラゴラ入りのワインを残してゆき、街に入ってきた敵軍が毒ワインを飲んで眠りこけたところを襲って勝利を収めたという話があり、だいたい飲んだほうも飲んだほうだが、そんな伝説のある恐ろしい有毒植物なのである。魔力が宿ってるかどうかはわからないが、毒はたしかにある。それは間違いない。

 しかし、マンドラゴラの実のほうなら、毒性を弱めて、食用に改良できるかも知れない。そう、50年ぐらいかければ、不可能な話ではないのかも知れない。おいしいかどうかはよくわからねど、マンドラゴラというネームバリューで、ちょっとは売れそうな気もするわけである。な・に・せ・媚薬。
 そういえば、茄子の実も、昔は、今よりも毒性が強かったようである。野菜はたいていがそうで、畑で栽培するようになってからだんだんと改良されて無毒になり、食用になっていく。野菜はすべてがそのようにして、何百年もかけて毒性を薄めて食用にしてきたといってもいい。が、それに伴って、薬効も低下してくる。そしておそらく魔力も低下してしまうのだろう。
 
  「親の説教となすびの花には千にひとつの無駄もない」などというがごとく、茄子は結実率がよろしい。さすが、多産の象徴だけのことはある。植えてさえおけば、実がなるといって、家庭菜園の人気品種の一つでもある。ただし、日照がないと、まず花が咲かないんですけどね。つぼみのうちに落ちてしまいます。マンドラゴラが茄子の仲間ということは、茄子もマンドラゴラの近縁種ということ、もしかしたら平安の女性たちが恋のまじないに使ったとしても、まったく不思議はないような気がしたのだが、しかし、どこを探しても、そんな伝承はなかった。残念。
 
 さて、我が家のラタトゥイユは、茄子を炒め、そこにピーマンとニンニクとトマト、ズッキーニを入れる。コンソメを1個入れて煮込み、出来上がったら冷蔵庫で冷やす。食べる前にオリーブオイルをかける。ただそれだけ。茹でたスパゲッティなどを混ぜて皿に盛るだけで、冷たいラタトゥイユ・パスタの出来上がり。もちろん、幻覚作用もなければ、媚薬効果もない、ごくごく普通のラタトゥイユですけどね。
 でも、マンドラゴラの近縁種ですから・・・輝くばかりのアントシアニンには、ちょっとだけ若返り効果があるのかも知れない、などと考えてみたくはなりますが。     (占術研究家 秋月さやか)






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