2014年10月12日日曜日

「悪魔の林檎」を食べたヒロインは永遠の眠りに。ああ、恐ろしきソラニンの呪い。

 悪魔の林檎とは・・・そう、じゃがいも。
 じゃがいもを薄くスライスして水にさらしたものを口に入れてみると、なぜ林檎なのか、その理由はすぐにわかるはず。なるほど、歯触りがまるでりんごそっくり。ただし、じゃがいもの生食はお薦めしませんけどね。
 
 じゃがいもの本格的な収穫は秋。大地から堀りあげた芋を保存し、越冬のための食料とする。でんぷん質たっぷりのほくほくしたじゃがいも! スライスして油で揚げたものは、フライドポテトチップス。みんな大好き、じゃがいもメニュー! いまやじゃがいものない国なんて、どこにもなんじゃないかしら。
 
 しかし、本来、じゃがいもは新大陸にしかない植物であった。チチカカ湖のあたりが原産地で、それがスペインの侵略により、ヨーロッパへと運ばれることになる。
 が、この芋にはひとつだけ問題があった。それもかなり深刻な問題が…。
 それは緑色になったじゃがいもの皮に含まれる有毒物質ソラニン(ポテトグリコアルカロイド solanine) 。ソラニン中毒は、嘔吐、下痢、腹痛、目眩、動悸、耳鳴、幻覚、痙攣、呼吸困難。そしてひどい時は死に至る。
 ソラニンはじゃがいもの皮、芽、さらには種にも含まれる。じゃがいもの種とは花が咲いた後に結実する緑色の卵状の実で、ソラニンたっぶりの有毒実なので、食べられません。簡単な話、地上に出たじゃがいもはすべて有毒だと思ってください。(地上に出ようとして発芽しつつある芽も有毒ということ。)
 
 南米の現地人は収穫した芋を凍らせ(というより、低温で凍ってしまうため)、水分を抜いた状態で乾燥させる。凍らせてから乾燥した芋であれば、保存しているうちに芽が出ることはないし、皮が緑化することもなく、ソラニンは生成されない。が、堀りとった後、太陽に当てたり、あるいは湿気や温度などの発芽条件が満たされた場所に置いておくと、当然、皮が緑色になり、芽を出してソラニンが生成されてしまうことになる。
 というわけで、新大陸の珍しい芋は、スペインに運ぶ船の中で芽を出してしまい、それを食べた船員がソラニン中毒となり、さっそく「悪魔の植物」と恐れられることになった。
 しかし、緑色になった皮や芽に含まれる有毒物質ソラニンのせいで中毒したのだとは誰も知らなかったので、あいかわらず人々は緑色になってしまった皮や発芽した芽を食べて中毒することも当然起こり、なぜ中毒するのかがわからず、「運が悪いと中毒する」ぐらいにしか考えられなかったようである。
 そのうえ、じゃがいもは聖書には載っていない食物、なぜならユーラシア、ヨーロッパにはなかった植物であるから載っているわけなどなのだが、聖書に載っていない→神が創ったわけではない、だから悪魔の植物。と、そのような連想にもなったらしい。
 
 ところで、日本でも、毎年数十人は、このじゃがいも中毒になります。じゃがいもを食べる時には気をつけて! じゃがいもの芽は取って、緑色になってしまった皮は剥いて!
 もう10年以上前の雑誌の投稿欄で、私は痛ましい記事を読んでしまったことがある。投稿者は北海道にひっこしした若い女性。「毎日、おいしいじゃがいもを食べて暮らしていたのに、それが原因で流産、知らなかった、じゃがいもの芽が毒だなんて。」と綴られたその文章に、私はびっくりしたと同時に、「なぜ、彼女はじゃがいもの芽が毒だと知らずに育ってしまったのだろう」と、やるせない気持ちになってしまった。つまり、その女性は、じゃがいもの芽が毒であることを教わらずに大人になってしまった、ということです。本当であれば、小学校の授業で教えるべき内容ではないでしょうか。親が教えればいいだろうと言ったところで、その女性の親が、コンビニの冷凍食品とファストフードのフライドポテトしかみたことがなかったとしたら、知らないことは教えようがありません。そう、昔、じゃがいもの芽を平気で食べて中毒してしまったヨーロッパの農民たちのように。
 
 ソラニンは太陽の光に当たると生成されますので、まずは芋を太陽の光に当てないこと。
 しかし太陽の光にあてずとも、温かな暗所で芋を長期保存すればやはり芽が出てきてしまうため、暗く冷たいところに閉じ込めておかなきゃだめです。望ましいのは気温5度以下。つまり、じゃがいもは地下冥界の食べ物であると心得るべし!
 
 なお、じゃがいもの芽を出さないようにする方法として、エチレンガスによる発芽抑制がありますが、つまり林檎と一緒にして保存すると発芽しにくくなるというもの。
 また、じゃがいもを170℃以上の油で揚げるとソラニンが分解するという報告があり、フライドポテトは食べ方としては安全側になるのかとは思いますが、しかし完全にソラニンが分解するわけではないので、やはりじゃがいもの緑色と芽は危険と覚えておいてください。
 
 有毒植物というのは、動物や虫類に食べられないように毒を作りだして自衛するという仕組み。毒はたいていの場合は苦みを伴い、動物が口に入れた途端に、「苦いじゃん、ぺっ」と吐きださせるようになっているわけですが、まずいぐらいではめげないこともあるため、さらに毒性を備えているというわけで、「これ食べて苦しくなってひどいことになったから食べない」という学習を動物たちにさせることで、結果的に身を護る。食用になんてされない、それは素晴らしい自衛。…のはずだったのですが。
 
 魔法使いが差し出した林檎は、ソラニンがたっぷりの緑色をした「悪魔の林檎」でした。「まあ、なんて新鮮でおいしそう。」
 「悪魔の林檎」を食べたヒロインは、あわれ永遠の眠りについてしまいます。王子様のキスで目覚める…なんていう生易しい呪いではありません。これで人々はもう「悪魔の林檎」を恐れ、食べることはないだろう。魔法使いはそう思ったのですが…。
 ソラニンの呪いを破る方法とは、陽の光に当てないこと。ソラニンを取り除くこと! ソラニンの呪いが解けたでんぷん質の、なんと美味しいこと! そしてフライドポテトは、世界中のアミューズメントパークで人気のスナックとなりましたとさ。
        (占術研究家 秋月さやか)








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